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     つれづれに「点の重さ」を思う     戸 張 丘 邨 

 

          

 

  ”点”、英語で「ドット」は今やインターネット使用の上では、必需品といえる。二つの点を結ぶと線になり、線は点の集まりということができる。「点と線」と聞くと、松本清張の長編推理小説を思い出す。

 

  ところで、この「点」なるものは、常識的には小さな粒状の形と考えられるが、数学的には「長さ・面積を持たず位置だけを示すもの」だそうである。だが、書における「点」はどうかというと、レッキとした長さも面積も持つものであることは論を俟たない。従って、この「点」という代物は、使用する分野、時と場合で、しっかり定義づけをしてかかる必要がありそうだ。

 

  筆者も若かりし頃、手習いの先生から、こんな注意を受けたことを思い出す。「書の点はそれで一画だから、ただ筆をトンと置くだけではなく、線を引くような気持ちでしっかりと書かなくてはなりません。」確かに書における「点」は、ささやかではあるが立派な一画であり、まことに重要な存在である。「点」の打ち方で、その人の腕前が分かると言われるくらいである。

 

  その「点」も、入筆の角度や筆圧の加減、筆運び等で千変万化の表情を持つわけであり、そして誰しもが「良い線を」と望むわけであるが、その「線」は点の集まりなのであるから、ゆめゆめ「点」を疎かにしてはならない。たかが「点」、されど「点」ということであろう。               

                                      ー 書道美術新聞(別冊) 千書万香21 より

   

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